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紫檀とは|木材の種類・色・希少性を解説

実家の座敷や、旅先の宿の一角で、黒っぽく重たい和家具に出会ったことはないでしょうか。手を触れると木とは思えないほどひんやりとしていて、動かそうとすると想像よりもずっと重い。あの木が、紫檀と呼ばれるものです。

紫檀とは何か——この記事では、その問いに正面から答えます。学名と種類、赤紫から黒紫へと変わっていく色、水の比重に迫るほどの重さ、産地、そしてワシントン条約による規制まで。実物の紫檀家具を扱う立場から、できるかぎり正確にお伝えします。

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紫檀とは、どんな木なのか

マメ科の広葉樹で、使えるのは「心材」だけ

紫檀(したん)は、マメ科の広葉樹です。熱帯から亜熱帯にかけて分布する高木で、日本では育ちません。日本の家具や調度に使われてきた紫檀は、すべて海を渡って運ばれてきた材です。

そして重要なのは、一本の木のうち、家具に使えるのはごく一部だけだということです。

樹木の幹は、外側の「辺材(へんざい)」と、中心部の「心材(しんざい)」に分かれます。辺材は水分や養分を運んでいる生きた組織で、色は白っぽく、材としての耐久性もそれほど高くありません。一方、心材はその役割を終えた部分です。役割を終えると同時に、木は内部に色素や樹脂、油分といった成分を蓄えはじめます。

紫檀のあの深い色と、緻密な質感と、虫を寄せつけない強さ。それらはすべて、心材に蓄積した成分がつくり出しているものです。

紫檀の家具に使われるのは、この心材だけです。 白い辺材は削り落とされます。一本の大きな丸太から、どれだけの家具が取れるか——そう考えたとき、紫檀という材の希少さの理由の半分は、すでにここにあります。

紫檀は、黒檀・鉄刀木とともに「唐木三大銘木」と呼ばれてきました。この呼び方には諸説あり、日本と海外で指すものも異なります。詳しくは世界三大銘木とは|紫檀・黒檀・鉄刀木でご説明しています。

重さは、数字で見るとよくわかる

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紫檀の話をするとき、必ず出てくるのが「水に沈む」という表現です。

これは、正しくもあり、少し言い過ぎでもあります。順を追って見ていきましょう。

木材の重さは「気乾比重」という数値で表されます。空気中で自然に乾いた状態での、水に対する重さの比です。1.0を超えれば、その木は水より重いことになります。

樹種 気乾比重
本紫檀(*Pterocarpus santalinus*) 0.82〜1.09
インドローズウッド(*Dalbergia latifolia*) 0.79〜0.88
ナラ 0.68〜0.69
ウォールナット 0.64
ヒノキ 0.39〜0.41
スギ 0.38

この表からは、二つのことが読み取れます。

ひとつは、紫檀はヒノキの2倍以上重いということ。日本の家屋で使われてきた針葉樹とは、まったく次元の違う密度を持っています。同じ大きさの箱をつくったとして、紫檀のそれは想像の倍の重さで手に返ってきます。

もうひとつは、「水に沈む」かどうかは樹種と個体によるということです。本紫檀は比重1.0を超えることがあり、そうした材は確かに沈みます。しかしインドローズウッドは通常1.0未満で、水に浮きます。同じ「紫檀」と呼ばれる材のなかにも、沈むものと浮くものがあるのです。

なお、「水に沈むかどうかで本物か確かめられる」という話を目にすることがありますが、ご自宅の家具でこれを試されないでください。 上の数値が示すとおり判定の方法として成り立ちませんし、木材は長時間水にさらされることをもっとも嫌います。

硬く、緻密で、虫が入りにくい

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紫檀は、密度が高く、組織が緻密です。その結果として、いくつもの性質が生まれます。

まず、硬い。 刃物が傷むほど硬く、加工には相応の技術と手間がかかります。カンナをかける、ホゾを刻む、曲面を削り出す——柔らかい木では難しくないことが、紫檀ではそのまま職人の腕の問題になります。

そして、虫や水分が入り込みにくい。 組織が詰まっているため、外から侵入する隙間が物理的に少ないのです。熱帯産の広葉樹が家具材として重宝されてきた理由のひとつが、この耐久性でした。

さらに、乾燥が難しい。 密度が高い材ほど、乾燥の過程で内部に応力がたまりやすく、割れや狂いが出やすくなります。紫檀の家具が高価である理由には、この乾燥に要する手間も含まれています。価格がどのように決まるのかは、唐木家具の値段は何で決まるのかで詳しくご説明しています。

「紫檀」はひとつの木の名前ではない

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ここからが、紫檀という言葉のいちばん面白いところです。

紫檀は、一種類の木の名前ではありません。 植物学上のひとつの種を指す和名ではなく、複数の銘木をまとめて呼ぶ、市場の名前なのです。

本紫檀(ホンシタン)

もっとも狭い意味での紫檀が、本紫檀です。学名は *Pterocarpus santalinus*。マメ科のインドカリン属に属します。中国では「小葉紫檀(しょうようしたん)」と呼ばれ、英語では red sandalwood と表記されることが多い材です。

インド南部の限られた地域にしか自生しない、紫檀のなかでもとりわけ希少な材です。

手違い紫檀(テチガイシタン)

手違い紫檀は、主に *Dalbergia oliveri*(現地名チンチャン)を指します。ツルサイカチ属という、本紫檀とは別の属の木です。

この名前の由来が、少し不思議です。「手違い」とは、本紫檀と取り違えられた紫檀という意味なのです。木目と色調があまりによく似ていたために取り違えが起き、その取り違えの記録が、そのまま材の名前として定着してしまいました。

木材の名前が「間違いの記憶」でできている例は、そう多くありません。

マルバシタン(インドローズウッド)

*Dalbergia latifolia*。こちらもツルサイカチ属です。英名は Indian rosewood。インド原産ですが、インドネシアにも広がり、現地では「ソノケリン(sonokeling)」の名で知られています。

家具材としても楽器材としても、世界中でもっとも多く使われてきた「ローズウッド」がこの材です。

紅木紫檀(コウキ)

三味線の棹に使われる材として知られる、業界の等級名です。三味線の世界では、紅木・紫檀・花梨の順に格が高いとされてきました。ただしこれは法令に基づく統一等級ではなく、業界の慣行として使われてきた呼び方です。

そして「本紫檀」の定義は、ひとつではない

ここに、この記事でもっともお伝えしたい事実があります。

先ほど、本紫檀の学名は *Pterocarpus santalinus* だとご説明しました。これは植物学上の対応です。

ところが、日本の唐木仏壇の業界には、別の定義があります。 仏壇公正取引協議会が定める表面材の品質表示基準では、「本紫檀」として *Dalbergia cochinchinensis*、*Dalbergia retusa*、*Dalbergia latifolia* が挙げられています。これらはすべてツルサイカチ属——つまり *Pterocarpus* とは属が違う木です。

同じ「本紫檀」という言葉が、植物学と業界の表示基準とで、別の木を指しているのです。

誤解のないように申し上げますが、これは誰かが偽っているという話ではありません。業界の表示基準に沿った、正しい表示です。ただ、名前の体系が二つ並行して走っている——それが唐木という商いの歴史がつくった現実です。

なぜこうなったのか。唐木の名前は、植物の分類ではなく、色・木理・重さといった「見た目と手触り」で見分ける商業名として発達してきたからです。輸入の事情によって似た性質の別の木が代替材として入ってくれば、それも「〇〇紫檀」と呼ばれました。表示基準に「紫檀系」という区分があり、そこにパーロッサ(*Swartzia*)やボリビアンローズウッド(*Machaerium scleroxylon*)、グラナディロ、ブビンガまでが例示されているのは、そうした歴史の結果です。

黒檀と紫檀は何が違うのか、という疑問をお持ちの方も多いと思います。両者は色も属も異なる別の木ですが、家具として比べて選ぶという視点は紫檀と黒檀の違い|家具としてどう選ぶかにまとめました。

ローズウッドと紫檀は、同じものなのか

「バラの香り」から来た名前

ローズウッド(rosewood)という英名は、その名のとおりバラのような香りに由来します。材を削ったときに甘い芳香を放つ種があり、それが名前になりました。

木の名前が、色でも産地でもなく「香り」でつけられている。紫檀という漢字の名とは、まったく別の感覚から生まれた名前です。

rosewood と紫檀は、一対一に訳せない

「ローズウッドの日本名は紫檀」——そう説明されることがあります。半分は正しく、半分は不正確です。

rosewood は、英語圏で色・香り・材質が似た複数の銘木に広く使われる総称です。とくにツルサイカチ属(*Dalbergia*)の多くがこの名で呼ばれます。日本語の「紫檀」も総称ですが、両者の範囲は重なりはするものの、一致しません。

たとえば *Dalbergia latifolia* は英語で Indian rosewood ですが、本紫檀 *Pterocarpus santalinus* は英語では rosewood ではなく red sandalwood と呼ばれることが多い。紫檀のなかでもっとも本物とされる木が、英語ではローズウッドと呼ばれない——用語の非対称は、ここまで来ています。翻訳で答えを出そうとすると、必ずどこかがずれるのです。

花梨(カリン)は、本紫檀と同じ属

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もうひとつ、意外に知られていない事実があります。

花梨(カリン)の学名は *Pterocarpus indicus*。 本紫檀 *Pterocarpus santalinus* と、同じインドカリン属です。別の種ではありますが、植物としては近い間柄にあります。

そして、仏壇公正取引協議会の規約には、カリンは「紫檀」とも表示できると明記されています。

西村貿易が扱う和家具のラインにも、花梨でつくられた机が一台あります。花梨一重4尺机【K012】です。紫檀の家具と並べてご覧いただくと、色調も木目の性格も確かに近い。近いけれども、同じではない。実物を二つ並べて初めてわかる違いが、そこにはあります。

「紫檀調」という言葉が意味するもの

表示のルールには、もうひとつ知っておくと役に立つ決まりがあります。

「紫檀調」「紫檀調プリント」「紫檀調着色」——このように「調」がつく表示は、材そのものではなく、外観を指します。紫檀の木目を印刷したシートを貼ったもの、あるいは紫檀に似せて着色したものには「調」を付けることが、表示基準で求められているのです。

つまり、「紫檀」と「紫檀調」は、違うものを指す言葉です。

このように、紫檀という名前をめぐっては、無垢材・代替材・外観仕上げが、それぞれの表示ルールのもとで併存しています。手元の家具が実際にどの材なのかをどう確かめるかについては、紫檀家具の手入れ|長く使うためにで詳しくご説明しています。

紫檀の色は、時間とともに深くなる

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伐採直後は赤紫、そして紫褐色へ

紫檀の心材は、伐ったばかりのときは赤紫から紫褐色をしています。想像されるよりもずっと赤い。「紫檀色」という日本の伝統色が、深く暗い赤みの紫として定義されているのは、この色に由来します。

そこから時間が経つにつれて、色は黒紫から黒褐色へと沈んでいきます。古い紫檀の家具が、ほとんど黒に見えるのはそのためです。

なぜ黒紫へ向かうのか

この変化は、単なる「汚れ」でも「劣化」でもありません。木材の内部で続いている化学変化の結果です。

心材ができる過程で、木は内部にフェノール性の化合物を蓄積します。これらの成分が、空気中の酸素と、光——とくに紫外線の作用を受けて、酸化し、重合し、キノン化する。その結果、光を吸収する波長が長いほうへずれていき、目には色が濃く、暗く映るようになります。

木材科学の分野では、材の色は「もともとあった色素」だけでなく、「生成されたあとに起きる酸化変化」によって強く決まると考えられています。紫檀が黒くなっていくのは、木がまだ変化を続けている証拠なのです。

縞は消えない。見えにくくなるだけ

長く使われた紫檀を見て、「昔はもっと縞がはっきり見えていた気がする」と感じられる方がいます。

これは記憶違いではありません。ただし、縞そのものが消えたわけではありません。

紫檀の木目に見える縞は、導管や放射組織の並び方に加えて、心材に蓄積した成分の濃淡によって現れます。経年で全体が黒紫へ寄っていくと、地の色と縞の色の差が縮まる。だから縞が見えにくくなる。模様は、そこにあり続けています。

油分が生む、内側からの艶

紫檀を磨くと、表面に塗ったのではない、内側から滲み出るような艶が現れます。

これは心材に含まれる油分によるものです。油分を多く含む材は、表面を磨いたときに光が均一に反射し、しっとりとした深い光沢が出ます。磨けば磨くほど、艶が増していく。塗膜でつくった光沢とは、質がまったく違います。

紫檀の家具が、使い込まれるほどに美しくなると言われるのは、この二つ——色の深まりと、艶の深まりが、同時に進んでいくからです。

白い部分は、家具に使わない

心材を取り巻く辺材は白っぽく、色も耐久性も心材とはまったく違います。そのため紫檀の家具には使わず、削り落とされます。 一本の丸太のうち家具になるのは芯だけで、しかもそのなかから色と木目の揃った材を選ぶ。紫檀の家具が少ない理由は、木が減ったからだけではないのです。

紫檀は、どこから来るのか

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日本に紫檀は生えません。では、どこから運ばれてきたのか。ここでの「産地」とは、木が自生する土地の話です。日本国内で紫檀を加工してきた土地と工芸の歴史については、唐木家具とは|紫檀・黒檀・鉄刀木の家具の系譜をご覧ください。

本紫檀は、インド南部の限られた森に

本紫檀 *Pterocarpus santalinus* が自然に分布しているのは、インド南部、とりわけアーンドラ・プラデーシュ州の限られた森林域です。

なぜ他の場所では育たないのか。この木が、乾燥寄りの特定の気候と土壌に適応した種だからです。ほかの土地に持っていっても、同じようには育ちません。しかも天然更新が遅く、伐られた分だけ資源が戻ってこない。

「インドの、ある地方の森にしかない木」——本紫檀の希少性は、まずこの一点から来ています。

インドからインドネシアへ渡った木

一方、インドローズウッド *Dalbergia latifolia* は、少し違う道をたどりました。

インド原産のこの木は、20世紀初頭にインドネシアへ持ち込まれ、ジャワ島でプランテーション栽培が始まりました。現地では「ソノケリン」と呼ばれ、いまも産出が続いています。

同じ「紫檀」と呼ばれる材でも、自生地の限られたものと、植林によって供給されてきたものがある。この違いが、市場での入手しやすさの差になっています。

東南アジアのシャム柿

ラオス、ベトナム、タイ、カンボジアといった東南アジアには、*Dalbergia cochinchinensis*——日本で「シャム柿」「タイ紫檀」と呼ばれてきた材があります。

この材も国際的に需要が高く、長く強い資源圧力にさらされてきました。

心材ができるまでの時間

ローズウッド類に共通するのは、成長が遅いということです。

そして、家具になるのは心材だけでした。若木には、まだ使える心材がありません。心材が十分に育つまでには、長い年月が必要です。

この性質が、資源にとっては厳しい条件になります。短い年数で伐っても価値のある材が取れない。だから成熟した木ばかりが狙われる。成熟木が減り、資源が枯れ、さらに違法な伐採を招く——ローズウッド類は、この悪循環にとりわけ弱い樹種群なのです。

なぜ紫檀は希少なのか|ワシントン条約と現在

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 697ed8343c74743e1d1838beea4a6942.jpg紫檀が希少であること、新品の紫檀家具がほとんど流通していないこと。その理由は、木が減ったというだけではありません。国際的な取引の枠組みが、はっきりと存在します。

2017年1月2日、ローズウッドが一斉に規制対象になった

ワシントン条約(CITES)の第17回締約国会議(CoP17)で、ツルサイカチ属(*Dalbergia*)の全種が附属書IIに掲載されました。発効は2017年1月2日です。

附属書IIとは、「いま絶滅の危機にあるわけではないが、取引を規制しなければ危うくなる種」の区分です。掲載されると、国際取引には輸出国の許可が必要になります。

この日を境に、世界のローズウッド取引は、それ以前とはまったく違う世界に入りました。

何が規制され、何が除外されているのか

ただし、*Dalbergia* 属のすべての取引が一律に止まったわけではありません。掲載には注釈#15という但し書きがついています。2022年の第19回締約国会議(CoP19)で改正され、2023年2月23日から現在の内容になりました。

注釈#15によって、規制の対象から除外されているのは主に次のものです。

– 葉、花、花粉、果実、種子

– 1回の出荷につき、掲載種の木材10kgまでの完成品

– 完成した楽器、楽器の部品、楽器の付属品

逆に言えば、丸太、製材、単板、粉、抽出物といった形の材は規制の対象です。そして家具は、10kgを超えれば当然その範囲に入ります。紫檀の家具を一台運ぶという行為が、どういう手続きを伴うか——想像がつくと思います。

なお、*Dalbergia cochinchinensis*(シャム柿)はさらに別の注釈#4で扱われるなど、種によって適用される注釈が異なります。

本紫檀は、別の枠で規制されている

ここで注意が必要です。本紫檀 *Pterocarpus santalinus* は、ツルサイカチ属ではありません。 したがって、いま述べた *Dalbergia* 属の掲載とは別扱いになります。

本紫檀は独自に附属書IIへ掲載されており、適用される注釈は#7。規制の対象は、丸太、木片(ウッドチップ)、粉、抽出物に限られています。

同じ「紫檀」と呼ばれる材のなかで、属が違えば規制のかかり方も違う。名前の体系が二重になっているという先ほどの話は、条約の世界にもそのまま持ち込まれているわけです。

最も厳しいのは、ブラジリアンローズウッド

ローズウッドのなかで、もっとも厳しく守られているのが *Dalbergia nigra*——ブラジリアンローズウッドです。

この種だけは附属書Iに掲載されています。附属書Iは「絶滅のおそれがあり、取引が生存を脅かす種」の区分で、商業目的の国際取引は原則として禁止されます。すべての部位と派生物が対象で、注釈#15による完成品や楽器の除外も適用されません。

日本に入れるために必要な手続き

日本の場合、条約の掲載種を輸入するには、実務上おおむね次の二つが必要になります。

– 経済産業省による輸入承認

– 輸出国が発行した輸出許可書、または再輸出証明書

したがって実際の輸入にあたっては、まず樹種と形態を正確に特定し、そのうえで注釈による除外に該当するかどうかを確認する、という手順を踏むことになります。

「正規のルートで輸入された紫檀の家具」という言葉の重みは、この手続きの上に成り立っています。

木が、いま最も多く違法に取引されている

最後に、驚かれるかもしれない事実をひとつ。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)とワシントン条約事務局がまとめた統計において、ローズウッド類は、押収量・押収額でみて世界最大級の違法な野生生物取引の品目群とされています。象牙でもサイの角でもなく、木が、もっとも多く違法に取引されているのです。

インドは本紫檀について伐採の規制と輸出の禁止を敷いていますが、条約事務局が2024年にまとめた報告書は、禁止のもとでも違法な伐採と取引が続いていると記しています。

紫檀が希少である理由は、成長の遅さと、心材しか使えない歩留まりと、限られた自生地と、そしてこの国際的な取引の現実——そのすべてが重なった結果です。この希少性が家具の価格にどう反映されるのかは、唐木家具の値段は何で決まるのかにゆずります。

家具としての紫檀を、実物で見る

西村貿易の紫檀ライン

紫檀について調べていくと、ほとんどの情報が、材木の話か、仏具の話か、あるいは骨董の話に行き着きます。家具として、いまつくられた紫檀に触れられる機会は、ほとんどありません。

西村貿易は1972年、材木商として創業しました。その後、高級輸入家具の専門商社として歩んできましたが、木を商うことから始まった会社であることは変わりません。現在は、自社で企画するオリジナルコレクション「London Explorers Collection」のなかに、紫檀と花梨の和家具を揃えています。

品番 商品名 備考
K010 紫檀文机 在庫1点
K019 紫檀肘付き椅子 —
K018 紫檀長方形食卓 —
K016 紫檀花台 在庫1点
K001 紫檀衣装間箪笥【好斉作】 在庫1点
K011 紫檀江戸火鉢【好斉作】 在庫1点
K015 紫檀天拝飾り台 在庫1点
K014 紫檀衣装箪笥【好斉作】 在庫1点
K013 紫檀一重蹴り足机 在庫1点
K012 花梨一重4尺机 在庫1点

いずれも、骨董市で買い付けてきたものではありません。アンティークでも中古でもなく、いまつくられた新作です。 なぜ新作を選ぶのかという視点については、アンティークではない紫檀家具という選択にまとめました。

それぞれの品目そのものについては、文机とは|読み方・歴史と現代の暮らしでの使い方、火鉢をインテリアとして使う|現代の住まいでの置き方、和箪笥をリビングに置く|現代のインテリア実例でご紹介しています。

伝統工芸士 好斉の手による三点

このラインのうち、紫檀衣装間箪笥【K001】、紫檀江戸火鉢【K011】、紫檀衣装箪笥【K014】の三点は、伝統工芸士 好斉の作です。

紫檀という材は、硬く、重く、乾燥が難しく、刃物を傷めます。その材で箪笥の引き出しを狂いなく仕込み、火鉢の縁を挽き、面を通す。作者の名が記されているということは、その仕事に責任を負う人がいるということです。

匿名の骨董が並ぶ市場のなかで、作者のわかる新作であること。これが、このラインのもっとも大きな特徴です。

重さは、持ってみないとわからない

ここまで、比重の数値や、色の変化の仕組みや、条約の条文についてお伝えしてきました。けれど、紫檀という材について本当に理解が変わるのは、実物に手を触れた瞬間です。

数字で「ヒノキの2倍以上」と読むのと、引き出しをひとつ引いてその重さが手に返ってくるのとでは、まるで違います。紫檀ラインは、白金台のショールームで実際にご覧いただけます。

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よくある質問

Q1. 紫檀とはどんな木ですか?
マメ科の広葉樹で、熱帯から亜熱帯にかけて分布する高木です。日本では育ちません。家具に使われるのは、色素や油分を蓄えた中心部の「心材」だけで、外側の白い辺材は使いません。また紫檀は一種類の木の名前ではなく、複数の樹種をまとめて呼ぶ市場の名前です。
Q2. 紫檀は高級木材ですか?
はい、古くから最上位の銘木のひとつとされてきました。理由は、成長が遅く心材ができるまでに長い年月がかかること、自生地が限られていること、家具に使えるのが心材だけで歩留まりが低いこと、そしてワシントン条約による国際取引の規制があることです。
Q3. 本紫檀とは何ですか?
植物学上は、学名 *Pterocarpus santalinus*(インドカリン属)を指し、中国では「小葉紫檀」と呼ばれます。インド南部の限られた森林にしか自生しない、紫檀のなかでもとりわけ希少な材です。
Q4. 紫檀と本紫檀の違いは何ですか?
「紫檀」は複数の樹種をまとめた総称、「本紫檀」はそのなかで最上位とされる材の呼び名です。ただし注意が必要で、植物学上の本紫檀(*Pterocarpus santalinus*)と、日本の唐木仏壇の表示基準でいう本紫檀(*Dalbergia* 属の数種)とでは、指している木が異なります。どちらも誤りではなく、名前の体系が二つ並行して存在しているためです。
Q5. ローズウッドの日本名は?
一般には「紫檀」と訳されますが、一対一の対応ではありません。ローズウッドは英語圏で色や香り、材質の似た複数の銘木に使われる総称で、日本語の紫檀と範囲が重なりはするものの一致しません。たとえば本紫檀は英語では red sandalwood と呼ばれることが多く、rosewood とは呼ばれません。
Q6. 黒檀と紫檀の違いは何ですか?
別の科・別の属に属する、まったく違う木です。おおまかには、黒檀が黒を基調とするのに対し、紫檀は赤紫から紫褐色を経て黒紫へと変化していきます。家具としてどちらを選ぶかという視点での比較は、[紫檀と黒檀の違い|家具としてどう選ぶか](https://maitland-smith.jp/blog/shitan-kokutan-chigai/)で詳しくご説明しています。
Q7. 黒檀と紫檀はどちらが高いですか?
一概には言えません。どちらも等級の幅が大きく、同じ樹種であっても材の質、木取り、寸法によって大きく変わるためです。価格がどのような要素で決まるのかは[唐木家具の値段は何で決まるのか](https://maitland-smith.jp/blog/karaki-kagu-nedan/)に、両者の比較は[紫檀と黒檀の違い](https://maitland-smith.jp/blog/shitan-kokutan-chigai/)にまとめています。
Q8. 紫檀は本当に水に沈みますか?
樹種と個体によります。本紫檀の気乾比重は0.82〜1.09で、1.0を超える材は沈みます。一方インドローズウッドは0.79〜0.88で、通常は水に浮きます。なお「水に沈むかどうかで本物を見分けられる」という話がありますが、判定の方法として成り立ちませんし、木材にとって長時間水にさらされることは大きな負担になります。ご自宅の家具でお試しにならないでください。
Q9. 紫檀の色は変わりますか?
変わります。伐採直後の赤紫から紫褐色を経て、年月とともに黒紫から黒褐色へと深まっていきます。これは劣化ではなく、心材に蓄積したフェノール性の成分が酸素と紫外線の作用で酸化していく化学変化です。木目の縞が見えにくくなるのは、縞が消えるのではなく、地の色が濃くなってコントラストが縮まるためです。
Q10. 紫檀は英語で何といいますか?
樹種によって異なります。本紫檀(*Pterocarpus santalinus*)は red sandalwood、インドローズウッド(*Dalbergia latifolia*)は Indian rosewood と呼ばれるのが一般的です。日本語の「紫檀」に一語で対応する英語はありません。

まとめ

紫檀とは、ひとつの木の名前ではなく、色と重さと緻密さでひとまとめにされてきた銘木の総称です。心材だけを使い、時間とともに赤紫から黒紫へ深まり、いまは国際的な取引の枠組みのなかで守られています。

その材でつくられた家具を、実際に手で触れて確かめていただければ幸いです。唐木という家具の系譜そのものについては、唐木家具とは|紫檀・黒檀・鉄刀木の家具の系譜をあわせてご覧ください。

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