アンティークではない紫檀家具|新作という選択
「紫檀の家具が欲しい」と思って検索した方は、おそらく少し戸惑ったはずです。画面に並ぶのは、落札相場の一覧、買取のご案内、個人売買の掲示板、そして骨董店の在庫リスト。求めていたのは家具を買える場所だったのに、返ってくるのは家具を手放す場所ばかりだった——そんな経験はないでしょうか。
これは偶然ではなく、いまの紫檀家具の市場がそういう形になっているということです。この記事では、なぜそうなったのかを検索結果の実情からご説明したうえで、もうひとつの選択肢——古いものではなく、いま作られた紫檀の家具を選ぶという道について、専門店の視点からお伝えします。

紫檀の家具を探すと、なぜ中古とオークションばかり出てくるのか
検索結果に並ぶのは、売る人ではなく手放す人
まず、実際の検索結果を数えてみます。
「紫檀 家具」「唐木家具」「和家具」「文机 アンティーク」——この四つの言葉で上位に表示されるページを重複を除いて集めると、全部で39件になりました。その内訳を業態ごとに分けると、次のようになります。
| 内訳 | 件数 |
|---|---|
| 新品を販売している店 | 7件(18%) |
| 中古・骨董・オークション・個人売買・買取 | 21件(54%) |
| 用語解説・動画など、販売していないページ | 11件(28%) |
つまり、紫檀の家具を探して最初の画面に並ぶもののうち、新品を売っているのは五件に一件にも満たないということです。とりわけ「文机 アンティーク」で表示された9件には、新品を扱うページが一件もありませんでした。
さらに、その「新品7件」の内訳を見ると、実際の事業者数はもっと少なくなります。同じ会社の本店・支店・ショッピングモール出店が別々に並んでいるためで、唐木の新作家具を扱う事業者としては実質二社にまで絞られました。
これは、どこかの店が悪いという話ではありません。アンティークを扱う専門店にも、骨董店にも、それぞれの目利きと蓄積があります。ここで見えているのは、この分野で「買う人」に向けて語られている言葉が、そもそも極端に少ないという市場の姿です。
「唐木家具」という言葉に、検索エンジンは6件しか答えを持っていない
もうひとつ、象徴的な数字があります。
「唐木家具」で検索したとき、Googleが返してきた総結果数は6件でした。ふつうの家具の言葉であれば、数十万件が並ぶところです。同じように、「紫檀 家具」に関連して表示される検索候補八つのうち、五つが「買取」を含む言葉でした。
紫檀 家具買取、紫檀 タンス 買取、紫檀 テーブル 買取価格——検索エンジンが「この言葉を調べる人は、次にこう調べます」と提示してくる候補が、ほとんど手放す側を向いている。この分野は、買う側の言葉がまだほとんど書かれていない領域なのです。
これは需要がないのではなく、供給が細ったということ
ここで注意しておきたいのは、中古と骨董が並ぶのは「紫檀の家具に人気がないから」ではない、ということです。むしろ逆で、探している人がいるのに、新しく作られたものが市場にほとんど出てこない。だから、過去に作られたものが何度も売り買いされる循環だけが残ります。
では、なぜ新作が減ったのでしょうか。理由は大きく三つあります。
唐木の新作が減った、三つの理由

一、作る人が減った
紫檀や黒檀のような堅い銘木を扱う木工の分野は、唐木指物と呼ばれます。なかでも大阪唐木指物は、昭和52年(1977年)10月14日に経済産業大臣指定の伝統的工芸品となった産地です。産地としての成り立ちや歴史については、唐木家具とはで詳しくお話ししています。
ここで見ておきたいのは、その産地のいまの規模です。大阪府がまとめた資料によれば、平成22年度の時点で18社24人。しかもそのうち、複数の従業者がいる事業所は4社のみで、後継者が心配される状態にあると記されています。
一つの産地の担い手が、二十数人。これは「職人が少なくなってきた」という水準の話ではなく、その技を持つ人が数えられる人数しかいないということです。堅い木を、狂わないように組み、漆で仕上げる。この一連の技術は、身につけるまでに長い年月がかかります。作れる人が減れば、当然、新しく生まれる家具も減ります。
二、材が国境を越えにくくなった
二つ目は、材の側の事情です。
2017年1月2日、ワシントン条約(CITES)の改正が発効し、紫檀を含むダルベルギア属の樹種が、原則として附属書IIに一括して掲載されました。これによって、丸太や製材だけでなく、家具という完成品の形になっていても、輸出入に許可書が必要になりました。
この「完成品まで対象になった」という点が、それまでの木材規制と決定的に違うところでした。作れば国境を越えて売れるという商品ではなくなり、材の合法な取得、樹種の同定、原産地の確認といった手続きが前提になります。結果として新規の供給は細り、すでに国内にある材や、証明のとれる在庫材を大切に使う方向へと、業界全体が動いていきました。
紫檀という木そのものの性質や種類、なぜこれほど希少なのかについては、紫檀とはにまとめています。
三、置く場所が変わった
三つ目は、住まいの側の変化です。
唐木の家具は、長らく座敷や和室という前提のもとで作られてきました。座って使う高さ、畳の上での据わり、床の間との関係。ところが、その前提となる部屋そのものが、住宅から少しずつ姿を消していきました。座敷机を専門に作る工房がほとんど見られなくなったのも、この流れの中でのことです。
需要が消えたわけではなく、需要の形が変わったのに、家具の側がその変化に追いつく前に作り手が減ってしまった。いま市場に並ぶのが過去のものばかりなのは、この三つが重なった結果です。
古い唐木家具で、分からないままになること
ここまで読んで、「では古いものを買えばいいのでは」と思われたかもしれません。実際、時間が付けた色艶や、使い込まれた角の丸みには、新品には出せない魅力があります。それは間違いなく価値です。
ただし、古い家具を買うということには、もうひとつの側面があります。手に入るのは家具そのものであって、その家具が過ごしてきた時間の記録ではない、ということです。以下は、アンティークを扱う専門店自身が購入前の注意として案内している項目でもあります。
木は、置かれてからも動き続ける
無垢の木は、湿度と温度の変化に合わせて伸び縮みを続けます。長い年月のあいだにその動きが積み重なると、天板がわずかに波打ち、引き出しの前板が浮き、ほぞの組み手が緩みます。搬入したときには気づかなくても、住まいの環境が変わってから現れることもあります。
膠は、いつか離れる
古い和家具は、現代の合成接着剤ではなく、膠(にかわ)で組まれている場合があります。膠は温めれば剥がして組み直せるという優れた性質を持つ一方で、乾燥と温湿度の変化が続けば接着力が落ちていきます。框の浮き、棚板の外れ、扉のがたつき——こうした症状が出たとき、再接着や締め直しが必要になります。
虫の跡と、その後の処置
古い木の家具では、シバンムシやキクイムシによる食害が問題になることがあります。厄介なのは、症状が背面・底面・引き出しの裏といった、購入時に見えにくい場所に出やすいことです。
そして最大の問題は、燻蒸や殺虫の処置がなされたのかどうかが分からないという点にあります。処置がなされていなければ、搬入後に被害が広がることもあります。
誰が、何度、どこまで直したのかが書かれていない
見た目が整っている古い家具ほど、過去にどこまで手が入っているかが分かりません。表面だけが再塗装され、内部の割れや食害はそのまま残っている、ということもあり得ます。真贋、時代、修復歴——これらは本来、価値を決める中心的な要素です。それが分からないまま取引されることが、この市場では珍しくありません。
昔の寸法と、いまの部屋
もうひとつ実務的な話として、古い和家具は当時の住宅の寸法感でつくられています。奥行きが深く動線を圧迫する、畳を前提とした高さでソファのある部屋に合わない、天井高との釣り合いが取れない。搬入経路も含めて、置いてみないと分からない要素が多く残ります。
繰り返しますが、これは古い家具を否定する話ではありません。「分からないことを引き受ける」という買い方があり、それを承知のうえで選ぶなら、それは立派な選択です。ここでお伝えしたいのは、その対極に、もうひとつの選び方があるということです。
新作を選ぶと、何が分かるのか

状態が分かる
新作を選ぶということは、この家具にまだ履歴がないということです。反りや緩みが積み重なる前の状態から、自分の住まいで時間を重ねていける。木が動くとしても、それはこの先、あなたの家の湿度のなかで起きることであって、誰かの家で三十年かけて起きたことではありません。
古色を付けて古びた風合いに見せる「アンティーク調」の家具とも、これは違います。西洋家具におけるアンティーク風の仕上げについてはアンティーク風家具の魅力でお話ししていますが、ここでご紹介する紫檀の家具は、古びた顔を装っていない、正真正銘の新しい仕事です。
責任の所在が分かる
もうひとつは、買うという行為そのものの性質が違う、ということです。
個人間の売買は、原則として特定商取引法の対象外にあたります。訪問販売などに認められているクーリングオフも、通常のネットオークションやフリマの取引では基本的に使えません。頼りになるのは民法の契約不適合責任ですが、出品時に「現状品」「傷あり」といった表示があると、後から不適合を主張することは難しくなります。骨董の世界で使われる「現状渡し」「ノークレーム・ノーリターン」という言葉も、法的にはリスクをどちらが負うかの合意として働きます。
難しい話に聞こえるかもしれませんが、要点はひとつです。見えていないものを、買い手が引き受ける取引になっている。正規の販売店から新作を購入するということは、その引き受けを店の側が持つ、ということでもあります。
直せることが分かる
そして、高価な木の家具にとって最も実務的な違いがここにあります。壊れたときに、どこへ持っていけばいいかが分かっているということです。
修理を頼める窓口があるかどうかは、単なるアフターサービスの話ではありません。その家具が長く使われることを前提に作られ、流通し、責任を持たれているかどうかの指標です。西村貿易でも、正規輸入代理店として熟練の職人によるアフターメンテナンス・修理を承っています。日々のお手入れの具体的な方法については、紫檀家具の手入れでご紹介します。
「好斉作」── 作者の名を持つ家具
在銘ということ
工芸の世界には、在銘と無銘という言い方があります。作者の名が記されているものと、記されていないもの。
在銘であることには、大きく三つの意味があるとされます。ひとつは作者の責任の表示。誰が作ったのかが示され、品質に対する責任の所在が明確になります。ふたつめは来歴の証明。この先この家具が誰の手に渡っても、どこで誰が作ったのかを辿れます。みっつめは価値そのもの。作り手の技量が知られていれば、その名が家具の価値の一部になります。
ここで誤解のないように申し添えると、無銘だから劣るということではありません。名が記されていない優れた仕事はいくらでもあります。違うのは質ではなく、辿れるかどうかです。
先ほど見た検索結果を思い出してみてください。並んでいたのは、落札相場と在庫リストでした。そこに並ぶ家具の多くは、誰が作ったのかを辿れません。それが悪いのではなく、新作にはそれがある、という違いです。
伝統工芸士という制度
作り手の技量を公に裏付ける仕組みとして、伝統工芸士の認定制度があります。伝統的工芸品の産業のなかで、一定の技能・経験・知識を持つと認定された職人に与えられるもので、認定された職人は品目・産地・職種・氏名とともに名簿に記載されます。
この認定を受けた職人が作った家具には、その名が付されます。誰がこれを作ったのかという問いに、あらかじめ答えが用意されている——それが、名のある家具ということです。
匿名の在庫と、名のある一点
西村貿易が扱う紫檀の家具のなかに、伝統工芸士 好斉の手による三点があります。紫檀衣装間箪笥、紫檀江戸火鉢、紫檀衣装箪笥。いずれも西村貿易のオリジナルコレクションであるLondon Explorers Collectionの一点で、それぞれ在庫は一点のみです。
新しく作られた家具でありながら、同じものが二つとない。中古市場でしか出会えないと思われていた「一点物」という言葉が、新作にも成り立っている——それが、この三点の立ち位置です。

一本の丸太から ── 好斉作三点の読み方
家具は、写真では「かたち」しか見えません。けれど作り手の仕事は、たいてい木取り——どの木のどの部分を、どう切り出して使ったか——に最もはっきりと現れます。三点を、その視点から読んでみます。
紫檀衣装間箪笥【K001】── 一本の丸太から全部材を

この間箪笥は、一本の紫檀の丸太から、すべての部材を製材して作られています。
これがどれほどのことか、少し想像してみてください。間箪笥の「間」とは、尺貫法の長さの単位です。一尺はおよそ30.3センチ、一間は六尺でおよそ1.82メートル。つまり幅1.82メートルの箪笥を、間箪笥と呼びます。天板、側板、扉、引き出しの前板、内部の仕切り——その全部を、一本の木から取る。
複数の丸太から寄せ集めれば、色も木目も揃いません。同じ紫檀でも、育った場所と部位が違えば表情が変わります。一本から取るということは、この箪笥のどこを見ても、木目が一続きになっているということです。そしてそのためには、幅1.82メートルの箪笥をまるごとまかなえるだけの一本が、まず必要になります。前の章でお話しした材の事情を思い出せば、この条件がいまどれほどの重さを持つかが分かるはずです。
組み方は、釘を一本も使わないほぞ組み。仕上げは拭き漆で、磨き上げられた漆の光沢が紫檀の木目をそのまま見せます。内部には桐が使われ、収めたものを湿度の変化から守ります。
紫檀江戸火鉢【K011】── 一枚で木取った側板

江戸火鉢は、四方を板で囲んだ箱の形をしています。ここで好斉が選んだのは、厳選した紫檀を大きく一枚で木取り、そのまま側面に仕立てるという方法でした。
継がずに一枚で取るということは、それだけ大きく、狂いのない材が必要だということです。そのかわり、板目の流れが途中で断ち切られることなく、面の端から端まで続きます。商品ページにある「流れるようなやさしい板目」という表現は、この木取りの結果です。幅80センチ、奥行き46センチ、高さ39.5センチ。ここでも在庫は一点のみです。
火鉢を現代の住まいでどう置くか、どう楽しむかについては、火鉢をインテリアとして使うで詳しくご紹介しています。
紫檀衣装箪笥【K014】── 磨き上げられた面と、鍵のかかる引手

三点目は、幅107センチ、奥行き46センチ、高さ34.5センチの衣装箪笥です。好斉によって丹念に磨き上げられた紫檀の面が、この家具の見どころになっています。
内部には、K001と同じく桐が使われています。引き出しの引手には金物が用いられ、鍵がかかるように設計されています。装飾のためではなく、衣装を納めるという役目のために選ばれた仕様です。和箪笥を現代の部屋にどう据えるかについては、和箪笥をリビングに置くをご覧ください。
三点に共通するもの
三点はいずれも、釘を一本も使わずほぞで組み上げ、拭き漆で仕上げるという唐木家具の作り方に則っています。この組み方と仕上げがなぜ唐木という材から生まれたのかは、唐木家具とはでご説明しています。
そして三点とも、『The collection Vol.3』——西村貿易 設立50周年記念号——の掲載商品です。1972年に材木商として創業した会社が、半世紀を経てまとめた一冊に、この三点が入っている。木を見ることから始まった商いの現在地が、ここにあります。
実物を見て、相談して、あとから直せるということ
実物を見る
紫檀の家具は、写真と実物の差が大きい家具です。拭き漆の光沢は、光の当たり方で表情を変えます。木目の深さ、面を撫でたときの手ざわり、そして持ち上げようとしたときの重さ——これらは画面では伝わりません。
新作を扱う店から買うということには、買う前に、その個体を見られるという当たり前の利点があります。落札相場の写真では、それができません。
家具フィッティングという方法
もうひとつ、判断を助ける方法があります。西村貿易では、候補の商品を実際にご自宅に設置して確かめていただく「家具フィッティング」を承っています。大型家具は一点、小型家具・アクセサリーは最大三点まで。東京・神奈川・埼玉・千葉、および京都・滋賀・大阪・兵庫が対象です。
古い家具を買うときにいちばん読みにくいのが、寸法と存在感の釣り合いでした。実際の部屋に置いてみられるなら、その不確かさは大きく減ります。
買ったあとに続く関係
そして、買ってからのほうが長い。木の家具は湿度と温度に応じて動き続けますから、何十年かのあいだには、調整や補修が必要になる場面が来ます。そのとき頼れる先があるかどうかが、結局この家具を長く使えるかどうかを決めます。
サービスの詳細はその他のサービスをご覧ください。
おすすめ商品

紫檀衣装間箪笥【好斉作】【K001】
一本の紫檀の丸太からすべての部材を製材し、伝統工芸士 好斉が仕上げた間箪笥。幅は一間、およそ1.82メートル。ほぞで組み、拭き漆で仕上げ、内部には桐を用いています。在庫は一点のみです。
よくある質問
Q1. アンティークとアンティーク調の違いは何ですか?
Q2. 紫檀の家具の価値は?
Q3. 唐木家具とは何ですか?
Q4. 日本の三大唐木は?
Q5. 和家具の一覧は?
Q6. 日本の伝統的な家具は?
Q7. 紫檀のタンスはいくらで売れますか?
Q8. 新品(新作)の紫檀家具は、まだ作られているのですか?
Q9. 「好斉作」とは誰の作品ですか?
Q10. 新作の唐木家具に保証はありますか?修理は頼めますか?
まとめ
紫檀の家具を探して中古と骨董ばかりが並ぶのは、需要がないからではなく、新しく作られるものが少なくなったからです。古いものには時間が付けた価値があり、新しいものには、状態が分かり、責任の所在が分かり、そして誰が作ったのかが分かるという価値があります。
どちらが上ということではなく、選べる状態にあることが大切だと私たちは考えています。一本の丸太から生まれた間箪笥を、ぜひ実物でご覧ください。
時を超える美との出会い
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クラシック家具の名門ブランドから厳選したアイテムを実際にご覧いただけます。
西村貿易株式会社 白金台ショールーム
〒108-0071 東京都港区白金台3-2-10 白金台ビル1F
営業時間: 10:00~18:00(月曜定休)
電話: 03-5793-3694





