表参道の小粋な街並みに建つ、氷山の如き前衛建築。そのクリスタルの中を、スケルトンのエレベーターに乗って3階へ。扉の向こうに、日常から遊離した異空間が広がる。そこは造顔マッサージで知られる田中宥久子氏がトータルでキレイを考え創り上げる美の空間、『Y・METHOD 本店 サロン』だ。
微妙に異なる3種の白が絡み合う壁と天井、シックでモダンな雰囲気を醸すモノグラムの床、高い天井から下がる美麗なシャンデリア、部屋の中央を彩る1930年代のアールデコの家具、陽光射す窓際に設えられたネオクラシックの家具、壁面を飾るスクリーンなど随所に配されたシノワズリー(東洋的)な調度品の数々……、「家具を決めてから空間をデザインした」という当サロンでは、それぞれの家具が持つ様式美が、その枠を超えて融合し、絶妙なハーモニーを奏でる。シャープな中にもエレガントさが香る、実に贅沢な気持ちに浸れる空間である。
家具はすべてメートランドスミスのもの。田中氏が7年ほど前に初めて出会った米国のブランドだ。 「アトリエのインテリアを探して渋谷へ行った時、貝でできた篝火のような間接照明と鉄のオブジェに出会いました。一目で『これだ!』と。そこに表現された東洋的な匂いとクラシックな味わいに感動したのです。インテリアは『惚れる』ものですね」と言う田中氏。その後、白金台のショールームを訪問し、メートランドスミスの日本総代理店である西村貿易の小西徹氏に「出会ってしまった」のだという。
「色味、材質、クラシックな趣、寂びた味わい……、私の感性に響くものばかり。この家具はドレスデンの花瓶に合うわ、これとこれをコーディネートしたらステキね、と商品を見ながら小西さんとあれこれ話すうちに、どんどんメートランドスミスの世界に魅せられていきました。私は空間を一つの様式で統一するより、異質なものをチョイスし融合させて統一感を出す、そういうコーディネートが好き。百年、二百年生き続ける家具は、時代や様式を超越したところで、普遍の魅力を放ちます。そこに自分の生き方やセンスを重ね合わせて表現したいのです」
そんな田中氏の美意識は、若い頃から長い歳月を経て熟成されたもの。「美術館に通ったり、海外のホテルなどで美しいインテリアに感動しては写真を撮ったり、俗世間から離れた空間の中に美との出会いを求めてきた」中で、自らが生きる居心地のいい空間の美に対する感性が醸成されたのだろう。
「私にパワーをくれるインテリアには、いつまでも本来の輝きを維持して欲しい。だから家具は全部、自分で磨き上げて大事にしています。床も家具をきれいに映すようピカピカにします。また、緑をたくさん置いて、その香気と澄んだ空気による安らぎの演出をしています。サロンを訪れるすべての方に、家具と緑が共生するこのインテリアの中でくつろぎ、また五感を喜ばせることでより美しく、元気になっていただきたいのです」――洗練された家具が集う空間は精気と美を創り出す、そんな神秘の力を秘めている。
※情報誌『Nile's NILE』2007年11月に掲載された弊社記事を転載しております。
田中宥久子(たなか・ゆくこ)氏
国家試験習得後、ヘア、メイク、着付け、日本髪等、あらゆる美のクリエイターとして、映画やテレビなどの映像の世界をはじめ、舞台や広告、CMでも幅広く活躍。
2007年4月、より多くの女性を美しくするために、長い経験と美容理論から編み出した”造顔マッサージ”を行う会員制サロン『Y・METHOD』(ワイ・メソド)を設立。同時に化粧品を研究・開発し、スキンケアコスメ『Y・METHOD』を立ち上げる。
サロン活動の他に、講演会、テレビ出演、雑誌など活躍の場を広げ続ける。